Smokebeesにインタビューしました

3月にサウナクールからアルバム”Imaginary Lights Never Fade”をリリースした
Smokebeesのお二方にメールでインタビューをしました。
アーティストのブログで公開されているアルバム収録曲の制作ノート(link)もぜひご覧ください。

—どういった経緯で結成されたのですか?

Miki Hirose(以下:M):
with me!というインディポップバンドの初代ギターが須藤さん、現ギターが私という事情から須藤さんに出会いました。出会ってからバンド結成に至るまで2年ほどの時間がありましたが、結成の一番のきっかけとなったのは、須藤さんのソロプロジェクトdesksnailのライブを観に行った時に、SEで敬愛するSparklehorseの音楽が使われていて…電撃が走りました。元々desksnailの音楽のファンだったこともあり、その後須藤さんから「コラボレーションしたいですね」と話をもらって、即答で「是非!」と答えました。数曲のコラボレーションだと思っていたら、最初のミーティングで「バンド名を決めましょう」という話になり。これはバンドになるのだなと自覚しました(笑)。

—どういう時に曲を作りますか?

M:
不定期ですが、素敵なインスピレーションが舞い降りてきた時。感情が何かによって動かされたタイミングや印象的な出来事があった時に音楽ができることは多いですね。

Taku Sudo(以下:S):
生活が整っていないと作れないです。健康的なものを食べ、情緒的な生活をしているときは感動したりしたタイミングでいい曲が自然にできるような感じがします。

—作曲、作詞はどちらが担当されていますか?

M:
作曲はお互い、各作品でほぼ半分ずつ担当しています。歌詞は須藤さんがほとんど全て書いてくれています。(Illuminantとmiyokoだけ廣瀬作詞です)

—海、山、空気、という自然を含め、街の通りなどの情景が浮かんでくる歌詞ですが、何かから影響を受けていますか?

S:
このアルバムはヨーロッパで経験した風景のモチーフが多く出ていると思います。歌詞は私にとって楽曲の根幹となる部分なので、いろんなアーティストの歌詞を読んでいますが、個人的な経験をそのまま口にしてくれるアーティストが好きです。そういう音楽の影響もあり、あえて抽象化せずに山は山、海は海、と言い切るようにしています。

—海外の生活や風景からの影響は音楽に反映されていますか?

M:
私は3ヶ月の留学と、海外旅行の経験しかありませんが、留学と制作期間が近接していたので、今回の作品に関しては海外(イギリスや北欧)の生活や風景からの影響も大きくあります。

S:
海外から日本への帰国の過渡期だったので、このアルバムには特に色濃く出ていると思います。海外の記憶/日本での現実という頭でしたので。

—ミックスなどでこだわった部分や苦労はありましたか?

M:
過去作のmixは全て空間的なレンジが狭かったので、今回は広い空間で鳴るイメージを大切にミキシングしました。これまで宅録作品がほとんどでしたが、今回はバンドセットでレコーディングした曲が複数曲あり(Begin Again, Miyoko, World Is Yoursの一部)、マイクを10本ほど立てて録音したドラムのミキシングには苦労しました。締切間際のミキシング期間は、EQ & コンプのレシピ本を携帯して隙間時間を見つけては繰り返し読んでいました。

S:
今回はバンドで録音したものや、リアンプで録音したトラックなど、触ったことのないトラックが多かったのでミックスは初めてすることに多く挑戦しました。そもそも、私は生ドラムのミックスがはじめてだったのでひいひい言いながらやりました。トラック数も多かったので、私がミックスを担当した曲ではステムミックスを初めて導入し、各パートごとに空間系のエフェクトを分けたり、ディレイだけ別トラックで入力したりしてみました。

—ライブでの再現の苦労やこだわりはありますか?

M:
物理的に二人では再現ができない楽曲ばかりですので、まずはライブ用にアレンジを練り直すところから始まります。これまで遠距離で活動していることが多かったので、アレンジも遠隔で、お互いライブ用デモ音源を作ってファイルを交換しながら仕上げていました。ライブの度、アレンジを一から考えるのは骨が折れますが、原曲のテーマやエッセンスを損なわないよう使用楽器や機材など工夫して取り組でいます。Smokebeesをはじめてからポケットピアノ、メロディーハープ、PO12(リズムマシン)、Casioのシンセ、サンプラーなど沢山の機材をお互い購入しました(笑)。しかし、どれもプライスレスの価値ある素晴らしい仲間たちです。

S:
ライブでは基本的に我々を含めた五人体制で演奏しています。Smokebeesの二人で出す「こんな感じ」という曖昧なイメージもばっちり音に仕上げてくれる頼れるメンバーたちです。去年の年末にadvantage Lucyのイベントに出演させていただいたときは、Boys AgeのKazくんが臨時でベースを弾いてくれて、それも楽しい思い出でした。6/29のレコ発にはさらに二人が加わって新しいサウンドを展開してくれる予定です。
ノイズなどの再現のためにどうしても機材が増えてしまうので、機材の運搬やセッティングにかかる時間が悩み種ですね..!

—アルバム制作時に、音楽、本、映画、景色など生活の中で何か影響を受けたものはありますか?

M:
ちょうどアルバム制作期を迎える前の年に、イギリスに3ヶ月留学してイギリス国内は勿論、北欧周辺を旅したので、その際に各地で見た景色や、各国の人々の生活風景には大きな影響を受けました。北欧旅行で観たアルヴァ・アアルトの建築、自然と調和した様々な教会、グラスゴーで訪れたMonorail Musicは特に印象に残っています。また、音楽活動10年の区切りとなる作品でしたので、学生時代から現在までを総括するような意味合いも込めて、音楽人生のターニングポイントとなったSparklehorseやSarah Records、映画『ミツバチのささやき』などから得たインスピレーションは作品の中に散りばめています。

S:
アルバム制作のタイミングがちょうどデンマークのビザが切れるタイミングでもあったので、アルバム制作のため、という意識で東京に帰ってきました。そのため、アルバムの制作はヨーロッパで過ごした記憶と東京に戻ってきた不安や展望など、色んなことを感じている時期でもありました。色んなことを何層にも感じながら仕上げたという意味では、そのときの境遇に一番影響を受けたと思います。

—どういったノイズをどういった意図で入れたか等ありますか?

M:
私発の曲ではフィールドレコーディングによるノイズが大半ですが、Playparkの冒頭にはデンマークで録音した本物の遊園地ノイズ、Sputnikにはイタリアで録音したイタリア語のラジオノイズ、Illuminantの最後には玄関に向かって歩く~扉を閉めるノイズが入っています。Miyokoではギターのフィードバックやアーム奏法によるホワイトノイズを全面的に使用しています。
ノイズは楽器だけでは表現できないイメージを再現するための大きな手助けとして、また各楽曲に彩りを与える役割としてSmokebeesでは意図的に多用しています。

S:
ノイズはいいですね~。私の曲では特に気に入っているのはTear LakeとLonesome Treeのノイズです。Tear Lakeは曲の展開自体にノイズを組み込んでいて、ノイズがないと再現できない曲です。音階になる前のプリミティブな響きがあり、Smokebeesの曲には欠かせない存在ですね。Tear Lakeではデータ通信の黎明期のノイズを使用しているのですが、ある世代以上の人だったら、誰が聞いても何の音かわかりますよね。ホワイトノイズのパターンにすぎない音が、ノスタルジーを感じさせたりするのはすごくロマンがあるなと思います。Lonesome Treeは歪んだギターのピックアップの上でスマホを操作しているデータ通信の音です。ピックアップが4G回線を拾ってるんですかね。2曲ともデータ通信のノイズなのですが、これは意図してません。ギターを使ってノイズを出そうとすると、いろんなことが試せて面白いです。





—Miyokoという曲名の由来はありますか?

M:
若気の至りで少々恥ずかしいですが、親友の実名です。
元々は親友への20歳の誕生日プレゼントとして制作しました。
詳しくはSmokebeesブログにupしておりますmiyoko制作ノート(link)をご覧ください。





—Smokebeesにとって音楽とは?

M:
終わりのない美しき学問であり、呼吸をするように生活に寄り添い、人生に彩りを与えてくれる大切な存在です。

S:
美しさをもったコミュニケーションと表現の媒体です。

—今後の展望はありますか?

M:
アルバム制作に沢山の時間や健康を費やしましたので、しばらくは生活を整えながら(笑)、引き続き音楽活動も。良い作品をマイペースに生み出していきたいです。

S:
細く長く、できるときにやりたいようにやっていきたいと思います。





Smokebees
“Imaginary Lights Never Fade”
1. Playpark
2. Begin Again
3. Tear Lake
4. Made For Faking Strong
5. Are You There
6. Miyoko
7. Lonesome Tree
8. Lilac Leaves
9. World Is Yours
10. Sputnik
11. Illuminant

Sauna Cool / SC10

OUT 2019/3/20
CD/iTunes

  • 2019.06.20